MMI面接の概要
こんにちは、大手予備校講師の奥津(プロフィール)です。受験生にはMMIという新しい入試への戸惑いや不安があります。そこで自身の知見を以下にまとめました。
なお、経験値を高めていくための「MMI問題集」もリリースします(2025年10月1日)が、知財が含まれるため他校や一般の方々には有料提供とします。
MMI面接試験を以下のように整理しました。いずれのタイプも問いに対する回答を起点に、受験生と面接官との「やりとり」が展開されます。
A:ケーススタディ
トレードオフを含むシチュエーションを設定し、自身の考えや行動を述べさせます。他人事ではなく自分事として思考・口述するのがポイントです。
B:図表
一枚の図表を提示し、わかったことと考えたことを述べさせます。fact(課題発見)とopinion(課題探求)とを整理して、思考・口述するのがポイントです。
C:論点整理
複数の論点を含むテーマを出題し、それぞれに対応した答えを述べさせます。テーマに関わる複眼的な理解・考察を通じて、思考・口述するのがポイントです。
D:サプライズ
特定のパターンがない想定外の問題を提示し、自由に述べる・振る舞うことが求められます。想定外に対して柔軟に考え、演じることがポイントです。
以下のように大学によって傾向があります。Aは千葉大学、筑波大学をはじめ、多くの大学で出題されています。MMIの告知がなくても、個人面接の中で取り上げられることもあります。東京慈恵会医科大学や東邦医科では複数のステーションで、全タイプがランダムに取り上げられるようです。なお、東北大学はタイプCが近年の傾向です。
MMI試験に必要なのは知識ではなく知恵です。
MMIは、単に知識量を問う従来の面接とは異なり、受験生が医療現場で直面するであろうさまざまな状況において、どのような思考プロセスを経て、どのように行動するかを多面的に評価するために設計されています。 MMI試験で求められる「知恵」とは、具体的に以下のような能力を指します。
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問題解決能力: 答えが一つではない、複雑なシナリオが提示されます。その際、単に正解を覚えているかではなく、問題を論理的に分析し、解決策を導き出す思考力が評価されます。
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倫理的判断力: 患者の治療方針、医療資源の配分、医療過誤など、ジレンマを伴う状況に対応する姿勢が問われます。その人の倫理観や価値観が問われるため、表面的な知識では対応できません。
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コミュニケーション能力: 面接官や、時には模擬患者との対話を通じて、自分の考えを明確に伝え、相手の意見を理解する能力が評価されます。チーム医療の現場で必須となる、協調性や共感性も含まれます。
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共感力と傾聴力: 患者やその家族の不安に寄り添い、信頼関係を築くための能力が試されます。相手の話をよく聞き、その背景を理解しようとする姿勢が重要です。
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自己認識と考察力: 自分の考えや行動を客観的に見つめ、なぜそのように考えたのかを説明する力が求められます。課題を通して自己を深く考察する機会でもあります。
もちろん、医療人として働く上で、基本的な医療知識は不可欠です。しかし、MMI試験では、その知識を「どう使うか」という知恵の方がより重視されます。
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知識: 医療の専門用語や特定の治療法に関する情報
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知恵: その知識を、現実の多様な状況に合わせて応用する力
たとえば、ある病気の治療法に関する知識があっても、患者の治療拒否という事態に直面したとき、その知識をどのように活かして患者と向き合い、信頼関係を構築するのか。そこにこそ、「知恵」が問われるのです。
対策のポイント
MMI対策としては、単に答えを暗記するのではなく、様々な状況設定を想定して「なぜ、どのように行動すべきか」を深く考察する練習が効果的です。模擬面接などを通じて、自分の考えを整理し、他者との対話の中で深めていくことが、MMIで求められる知恵を磨くことにつながります
MMI対策の基本は経験値を高めていくことです
MMIは、単一の面接官との一問一答形式ではなく、複数の短いステーションを巡り、多様なシチュエーションで受験生がどう反応するかを評価するものです。そのため、様々な状況への対応経験を積むことが、そのまま本番での対応力に直結します。
経験値を高める具体的な方法
1. 模擬面接を繰り返す
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多様な出題形式に触れる: シナリオベースの質問、倫理的ジレンマ、図表の読み取り、模擬患者とのロールプレイなど、MMIのステーションは多岐にわたります。様々な形式の模擬面接を経験することで、どのようなタイプの質問が来ても慌てず、適切な対応ができるようになります。
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フィードバックをもらう: 面接官役の人から、自分の考えの伝え方、コミュニケーションの仕方について客観的なフィードバックをもらいましょう。自分が気づかない癖や弱点を知ることができます。
2. 日常的に思考と対話の訓練をする
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ニュースや時事問題について考える: 日頃からニュースや社会問題に関心を持ち、自分なりの意見を持つ練習をします。なぜそのように思うのか、複数の視点からどう考えられるか、という思考を深めます。
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他者と議論する: 家族や友人と、日々の出来事や社会問題について話し合います。自分の意見を分かりやすく伝え、相手の意見にも耳を傾ける練習になります。
3. 医療現場への理解を深める
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医療系の記事や本を読む: 医療現場で実際に起こる出来事や倫理的な問題について書かれた記事や書籍を読み、医療従事者がどのような状況に直面しているかを知ることは、MMIのケーススタディ問題を考える上で役立ちます。
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医療ドラマを観る: 医療ドラマは、現実とは異なる部分もありますが、医療現場の人間関係や倫理的ジレンマを考えるきっかけになります。作中の状況について、「自分ならどうするか」と自問してみるのも良いでしょう。
4. 様々なシチュエーションを想定してシミュレーションする
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出題形式を整理する: 事前にMMIで出題される可能性のある形式(上記A ,B,C,D参照)を整理し、それぞれの形式でどのようなことが問われるかを理解します。
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問題に対するアプローチを考える: 模擬問題を解く際には、答えを考えるだけでなく、問題を分析し、解決策を導き出すプロセスを重視します。この思考プロセスこそが、本番で問われる「知恵」の源泉となります。
こうした「経験値」の積み重ねによって、本番では以下のような力が発揮できるようになります。
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瞬発的な思考力: 未知の状況でも、これまでのシミュレーション経験から、落ち着いて状況を把握し、論理的に思考することができます。
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的確なコミュニケーション: 様々な対話経験を通じて、自分の考えを分かりやすく、説得力を持って伝えるスキルが向上します。
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共感力と柔軟な対応力: ロールプレイなどで他者の立場を体験することで、相手の感情や背景を推測し、共感に基づいた対応ができるようになります。
このように、MMI対策における「経験値」は、単なる知識の蓄積ではなく、実践的な思考力とコミュニケーション能力を養うための土台となります。